近年、事業の成長に伴い、個人事業主から法人化を検討する起業家が増えています。

法人化には様々なメリットがありますが、個人事業主を継続することもできます。

本ブログでは、法人成りと個人事業主の両立について、メリット、デメリット、注意点、事業領域の区別などを詳しく解説します

。個人事業主から法人化を検討している方や、両者を上手に併用したい方におすすめの情報が満載です。

1. 法人成りと個人事業主を両立するメリット

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法人化と個人事業主を同時に行うことには、以下のようなメリットがあります。

1. 信用度の向上

法人化することで、社会的な信用度が向上します。法人は登記簿謄本を公開するため、詳細な情報が取引先に提供されます。

このため、取引先からの信頼を獲得しやすくなります。また、法人との取引も可能であり、市場の拡大につながるチャンスもあります。

業種や事業内容によっては、法人の方が人材を採用する際に優遇されることもあります。

2. 有限責任の享受

個人事業主は無限責任を負いますが、法人化することで有限責任を享受することができます。

有限責任とは、事業に失敗した場合に負債を返済しなければならない範囲が制限されることを意味します。

これにより、個人事業主と比べて負債の負担が軽減され、再スタートを切りやすくなります。

3. 節税効果の獲得

法人化による節税効果も大きなメリットです。役員報酬や退職金の扱いによって、法人税を節税することが可能です。

役員報酬は経費として計上され、給与所得控除が適用されるため、所得税の負担が軽減されます。

また、法人化後には退職金を損金とすることができるため、法人としての節税効果が期待できます。

4. 事業の継承

法人化することで、事業の継承が容易になります。

個人事業主の場合、事業主が病気や亡くなった場合、事業が廃業するリスクがあります。

しかし、法人化することで法人自体が事業対象となるため、経営者が変わっても事業を継続することが可能です。

5. 決算月の柔軟な設定

法人化することで、決算月を自由に設定することができます。

個人事業主の場合、毎年3月15日までに確定申告を行う必要がありますが、法人化することで比較的忙しくない時期に決算の手続きを行うことができます。

以上が法人成りと個人事業主を両立するメリットの一部です。最適な選択肢を見極めるためには、専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。

2. 法人成りと個人事業主を両立するデメリット

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法人成り後にも個人事業主を継続する場合、以下のようなデメリットが考えられます。

2.1 税金の負担が増える可能性

個人事業主から法人組織への変更により、法人の税金負担が増える可能性があります。

個人事業主の場合、所得が赤字であれば所得税や住民税は免除されますが、法人が赤字だった場合でも、法人税は免除されず、法人住民税の均等割額を納める必要があります。

2.2 経理や決算申告の手続きの増加

個人事業主を継続するためには、個人と法人の両方の経理や決算申告が必要となります。

このため、手続きが煩雑になります。経理や決算申告の手続きはそれぞれ異なるルールや規則を順守する必要があり、注意深く対応する必要があります。

2.3 融資審査で不利になるリスク

法人と個人で事業を分けている場合、融資を受ける際に不利な条件を提示される可能性があります。融資機関は、個人と法人の双方を対象として融資判断を下すため、双方の事業のリスクや収益性を評価します。個人事業主としての信用や実績がある場合でも、法人としての信用を築く必要があります。

これらのデメリットを最小限に抑えるためには、以下の点に注意することが重要です。

  • 全体の税金シミュレーションを行い、具体的な負担増減を把握する。
  • 専門家である税理士の支援を受ける。
  • 法人化の目的や意図を明確にし、事業計画と組み合わせて説明する。
  • 融資審査において、法人と個人事業の双方の強みをアピールする。

これらの対策を講じることで、税金負担の増加を抑えたり、融資審査で有利な条件を得ることができる可能性があります。

3. 個人事業主を継続する際の注意点

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個人事業主を継続する際には、以下の注意点に留意する必要があります。

① 法人と個人が同じ事業を行ってはならない

個人事業主として継続する場合、法人と同じ事業を行ってはいけません。

個人事業と法人は別の法的存在であり、同じ事業を行うことは避けなければなりません。

同じ事業を行うと、売上の付け替えなどの利益操作とみなされ、税務署からの疑いを受ける可能性もあります。したがって、法人と個人で異なる事業を行うことを心掛けましょう。

② 許認可が必要な業種では法人への引継ぎ手続きが必要

一部の業種では許認可が必要となりますが、その場合は法人への引継ぎ手続きが必要です。

個人から法人への引継ぎは、飲食店の営業許可や酒類販売に関する許可、古物商許可などでは認められていません。

ただし、建設業の許可には法人に移行する制度が存在するため、注意が必要です。個人事業主を継続する場合でも、許認可の要件が異なる場合があるため、申請先に確認することをおすすめします。

③ 利益相反取引に注意する

個人事業主を継続する際には、利益相反取引に注意が必要です。利益相反取引とは、法人とその役員の間で、一方が利益となる行為がありながら他方に不利益となる行為が存在することを指します。

利益相反取引は会社法によって規制されており、取締役会設置会社では取締役会への重要事実の開示と承認、非設置会社では株主総会への重要事実の開示と承認が必要です。

利益相反取引の判断は容易ではないため、事前に税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

以上が個人事業主を継続する際の注意点です。個人事業主と法人の違いや関係性、許認可の手続き、利益相反取引などについて理解を深め、適切な対応を行うことが重要です。

4. 法人と個人事業の事業領域の区別

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法人と個人事業では、事業領域が異なることがあります。

法人化する場合、個人事業主は自身の事業を法人に移行する必要があり、そのためには法人と個人事業の事業領域を明確に区別する必要があります。

法人の事業領域

  • 法律や会社設立時の定款に基づき明確に設定されます。
  • 法人の目的に合致し、法人の範囲内で業務を行います。
  • 法人の目的から外れる業務を行うことはできません。
  • 法人の活動は、株主総会や取締役会で議決されることが多いです。
  • 法人の範囲内での業務は、法律や規制に基づいて適切に行われるべきです。

個人事業の事業領域

  • 個人事業主の能力や経験、資金によって制約されます。
  • 個人事業主の自由な判断に基づき業務を行います。
  • 個人事業主が得意とする分野や経験を活かした業務を行うことが多いです。
  • 個人事業主は、自身の事業において独自の方針を立て、自己責任で業務を行います。

法人と個人事業の事業領域は、個人事業主が法人化する際に重要なポイントとなります。法人としての活動を行う場合、法人の目的や規制に従って業務を適切に行う必要があります。

一方、個人事業主としての自由な判断と能力を活かし、個人事業の特性を生かして業務を行うことも重要です。

個人事業主が法人と個人事業を並行して行う場合には、事業領域や業務の関連性、公平性などを考慮する必要があります。

公正な取引や適切な税務処理を行うためにも、法人と個人事業の事業領域の区別を明確にすることは重要です。

5. 個人事業主を廃業しない手続き

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個人事業主が廃業しない場合、いくつかの点に留意する必要があります。

以下に、個人事業主が廃業しない際に行うべき手続きと注意点をまとめました。

1. 廃業届の提出

個人事業主は、廃業届を所轄税務署と管轄の都道府県税事務所に提出する必要があります。

廃業届の提出期限は廃業日から1ヶ月以内です。廃業届が提出されると、事業の廃止が実施されます。

2. 廃業した年の確定申告

廃業した年の事業所得を確定申告する必要があります。廃業届を提出した後でも、廃業した年の確定申告は必要です。

年を跨ぐと確定申告を2回(2年分)しなければならないため、年末間際に廃業を考えている場合は、年内で廃業することが望ましいです。

3. 取引先との精算

廃業する際には、取引先との精算を行うことが重要です。

特に、多くの取引先がある場合には、それぞれの取引先との精算をしっかりと行いましょう。

廃業することは社会的な責任も伴うため、取引先との関係を良好に保つことが望ましいです。

4. 法人化を検討している場合の手続き

もし法人化を検討している場合は、商業登記で「解散」と「清算」の手続きを踏む必要があります。

法人化をする場合の手続きは個人事業主とは異なりますので、専門家の助言を受けながら進めることが重要です。

以上が、個人事業主を廃業しない場合の手続きや注意点です。廃業手続きを適切に行うためには、必要な書類を提出し、関連機関との連絡を適切に行うことが重要です。個人事業主の事業をスムーズに終了させるためにも、正確な手続きを行いましょう。

まとめ

法人成りと個人事業主を両立する場合は、信用度の向上や節税効果、事業の継承などのメリットがある一方で、税金負担の増加や経理手続きの煩雑さなどのデメリットもあります。

個人事業主を継続する際には、事業領域の明確な区分や利益相反取引への注意が必要です。また、個人事業主を廃業せずに法人化する場合は、様々な手続きを適切に行う必要があります。

これらの点を踏まえ、自社の状況に合わせて最適な選択を行うことが重要です。専門家のアドバイスを得ながら、法人と個人事業の両立を検討することをおすすめします。