事業の撤退には、店舗の閉鎖と会社自体の事業からの撤退(廃業)があります。

この記事では、店舗の閉店と会社の廃業の違い、廃業する理由と対策、廃業のメリット・デメリットについて詳しく解説しています。

事業を持続させるか廃業するかは重要な経営判断であり、適切な対応が求められます。この記事を通して、廃業について深く理解を深めることができます。

1. 閉店と廃業の違いとは

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閉店と廃業は、経営用語の中でしばしば混同されることがありますが、実際には異なる意味を持ちます。

1.1 閉店の意味と特徴

閉店とは、特定の店舗の営業を終了することを指します。一部の店舗を閉めることや特定の店舗の営業を終了することが含まれます。

閉店では、その店舗の営業が終了するだけで、他の店舗や事業は継続します。つまり、全体としては事業が存続しており、その一部の店舗のみが閉まっている状態です。

閉店の主な特徴は次のとおりです。

  • 特定の店舗の営業終了
  • 他の店舗や事業が継続
  • 一部の店舗が閉まっている状態

1.2 廃業の意味と特徴

廃業とは、会社や個人事業主が自ら事業を終了することを指します。自主的に事業をたたむことが該当します。

廃業では、事業そのものが終了します。特定の店舗の閉店や一時的な休業ではありません。

廃業の主な特徴は次のとおりです。

  • 会社や個人事業主の事業終了
  • 再開には手続きが必要
  • 事業を再開することは原則としてない

1.3 閉店と廃業の違い

閉店と廃業の違いは、主に以下の点にあります。

  1. 営業の対象:閉店は特定の店舗の営業終了を意味し、廃業は会社または個人事業主の事業終了を意味します。
  2. 存続性:閉店では他の店舗や事業が存続しているため、事業全体としては継続しています。一方、廃業では事業そのものが終了し、再開する場合には手続きが必要です。
  3. 影響範囲:閉店では特定の店舗のみが閉まるため、他の店舗や事業には直接的な影響を与えません。一方、廃業では事業全体が終了するため、関係する従業員や取引先、および行政機関などにも影響を与えます。

以上が、閉店と廃業の違いについての説明です。次のセクションでは、廃業する理由と対策について詳しく解説します。

2. 廃業する理由と対策

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廃業する理由は様々ですが、経営状態の悪化や後継者不在などが主な要因とされています。廃業する場合には、これらの理由に対する対策が必要です。以下では、廃業する理由とその対策について詳しく説明します。

2.1 経営状態の悪化

経営状態が悪化し、赤字が続く場合、廃業を選ぶことがあります。この場合には、負債の増加や資金調達の困難などが問題となります。対策としては、以下のようなものが考えられます。

  • コスト削減策の見直し:経費の見直しや無駄な出費の削減を行い、赤字を減らすよう努めます。
  • 資金調達の工夫:債務超過を解消するために、新たな資金を調達する方法を検討します。例えば、株式や債券の発行、資金援助の依頼などが考えられます。

2.2 後継者不在

後継者がいないために廃業を選ぶ場合、事業の存続が難しいと判断されることが多いです。後継者不在の場合、以下の対策が考えられます。

  • 後継者の育成:後継者がいない場合は、従業員や家族の中から後継者を育成することを検討します。教育・研修の機会を設けたり、経営のノウハウを伝授するなど、適切なサポートを行いましょう。
  • 売却やM&A:後継者が育成できない場合は、事業を他の企業に売却したり、M&A(合併・買収)を検討することもあります。これによって、事業の存続が可能となる場合があります。

2.3 将来への不安

将来的な不安から廃業を選ぶ場合には、以下の対策が考えられます。

  • 新たな事業展開の検討:事業の将来性に不安がある場合は、新たな事業展開を検討することがあります。市場調査や顧客ニーズの把握などを行い、将来性の高い事業への転換を検討しましょう。
  • 事業のリストラクチャリング:将来的な不安を解消するために、事業のリストラクチャリングを行うこともあります。業務プロセスの見直しや組織の再編成などを行い、効率性と収益性を向上させるよう努めましょう。

2.4 資金ショート

資金不足が原因で廃業を選ぶ場合には、以下の対策が考えられます。

  • 資金調達の工夫:資金調達の手段を見直し、新たな資金を調達する方法を検討します。例えば、銀行からの融資や投資家への資金調達、クラウドファンディングなどが考えられます。
  • 借金の再構築:負債が膨らんでいる場合は、債務整理や借金の再構築を行うこともあります。法律の専門家に相談し、最適な解決策を見つけましょう。

廃業を選ぶ理由に対する適切な対策を行うことで、事業の存続や経営状態の改善を図ることができます。経営者は、自らの事業や状況に応じた対策を検討し、適切な判断を下すようにしましょう。

3. 廃業のメリット・デメリット

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廃業を選択する際には、メリットとデメリットの両方を比較検討する必要があります。以下では、廃業のメリットとデメリットについて詳しく説明します。

3-1. メリット

廃業を選択すると得られるメリットは次の3つです。

経営に関する負担から解放される

廃業を選ぶ最大のメリットは、経営に関する負担から解放されることです。会社経営を継続すると、さまざまな経営上の悩みが発生しますが、廃業するとこれらの負担から解放されます。ただし、休業(休眠)の場合には固定資産税や法人住民税の支払いなどの義務がありますので、廃業か休業かの選択は慎重に行う必要があります。

倒産時の手続きが簡易になる

廃業は倒産に比べて手続きが簡易です。倒産すると破産手続きが必要になり、弁護士の相談や裁判所への申立てなどが時間と手間を要します。しかし、廃業の手続きは株主総会での解散決議や財産の清算などが必要ですが、破産手続きに比べて簡単です。計画的に廃業手続きを進めれば、経営者個人の資産を守ることもできます。ただし、会社が持つ資産や負債は清算されるため、会社に残るお金はほとんどありません。

債務を返済した状態で閉業できる

廃業を選択する場合、従業員や取引先への債務を返済してから会社を閉じるため、関係者への迷惑を最小限に抑えられます。従業員への退職金や取引先への負債の支払いを十分に行えない場合、経営者は後ろめたさを感じるかもしれません。廃業により、このような資金面での精神的負担を軽減できるのもメリットです。

3-2. デメリット

廃業する際のデメリットは次の5つです。

これまでの人的関係が消滅する

廃業により、これまで築いた取引先や顧客との関係が基本的に消滅します。従業員も解雇しなければならず、独自のノウハウやブランド、人脈、特許や技術などもすべて捨てる必要があります。また、国や自治体からの許可を受けて営業していた場合、許認可も失うことになります。新たに事業を始める場合でも、すべてをゼロから再構築しなければならず、大変な労力を要します。

従業員の解雇が必要になる可能性

廃業に伴い、愛着のある従業員を解雇する必要がある場合もあります。これは心苦しいことですし、将来に残すべき経営資源が自身の代で失われる可能性もあります。廃業だけでなく、従業員に周知しフォローアップする過程で、引き継ぎや第三者への事業承継の可能性も検討することが重要です。

経営資源を失う

廃業により、築いたノウハウや顧客基盤、人脈、特許や技術などの経営資源をすべて失ってしまいます。さらに、清算・廃業により利益が少なくなる場合もあります。したがって、廃業は経営資源をすべて失うことを意味します。

資産処分に関する問題が生じる可能性

清算・廃業時には事業停止を前提としているため、資産の処分価額は帳簿上の価値とは異なる場合があります。その結果、資産の売却が思うように進まない可能性があります。また、会社の帳簿上の資産をすべて処分した後、借入金などの債務を完済できないリスクも考慮しなければなりません。

廃業にかかる費用

廃業に伴い、さまざまな費用が発生します。従業員への退職金や解散登記にかかる費用、清算人の選定費用、清算結了の登記費用、官報への解散公告の掲載費用、店舗や工場の設備や機材の処分費用、在庫商品の廃棄費用、店舗や工場の原状復帰費用などが挙げられます。廃業手続きにはこれらの費用を予算化する必要があります。

廃業を選択する際には、デメリットも念頭に置きながら検討することが重要です。

4. 廃業や閉店にかかる費用

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閉店や廃業には、様々な費用がかかります。以下では、主な費用やその内訳について紹介します。

4.1 解約予告期間分の賃料

廃業や閉店する際には、通常、一定の期間の解約予告が必要となります。この解約予告期間中に支払わなければならない賃料がかかります。解約予告期間の長さによって費用が変動するため、契約書をよく確認してください。

4.2 ライフラインの使用料金

閉店や廃業後も、電気やガス、水道などのライフラインの使用料金がかかる場合があります。これらの料金は定期的に支払う必要があるため、廃業や閉店の計画を立てる際に考慮してください。

4.3 リース品の残額料金

事業運営に必要な機器や設備をリースで利用していた場合、解約時に残額料金が発生することがあります。ただし、別の店舗でリース品を利用する場合には、物件保管場所変更届の提出により返済を免除できるケースもあります。

4.4 不要品の処分費用

廃業や閉店に伴い、不要になる商品や家具・備品などの処分には費用がかかります。不用品を別の店舗で利用することで処分費用の削減ができる場合もあるため、効率的な処分方法を検討しましょう。

4.5 人件費

廃業や閉店に伴い、従業員への給与や退職金の支払いが必要となる場合があります。従業員の生計を守るため、適切な額の給与や退職金を計算し、予算に組み込んでおく必要があります。

4.6 原状回復工事の費用

廃業や閉店に際しては、店舗や物件の原状回復工事が必要となることがあります。原状回復工事の内容や規模によって費用は異なりますが、居抜き売却を検討することで費用を抑えることができる場合もあります。

これらの費用は、廃業や閉店に伴い必要となるものです。計画段階から予算を立て、できる限り効率的にコストを抑える方法を検討することが重要です。

5. 廃業や閉店を効率的にする方法

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廃業や閉店を効率的に進めるためには、以下の方法を検討することが重要です。これらの方法は、費用や手続きの負担を軽減し、スムーズに終了するためのヒントとなります。

  1. 居抜き売却を検討する
    – 居抜き売却とは、既存の店舗を引き継ぎ、即時に営業を再開できる状態で売却する方法です。これにより、リース品の解約手続きや原状回復工事の費用を抑えることができます。
    – 店舗買取り業者や不動産会社に相談し、居抜き売却の可能性を探りましょう。
  2. リース品の利用先を別店舗に検討する
    – もし複数の店舗を展開している場合、閉店予定の店舗のリース品を別の店舗で利用することで、返済手続きや違約金の支払いを免除できます。
    – 物件保管場所変更届を提出し、リース品の利用先を変更する手続きを進めましょう。
  3. 不用品の処分費用を削減する
    – 閉店や廃業に伴って出る不用品の処分費用は、大きな費用の一部となります。処分業者に依頼せず、自身でリサイクルショップやネットオークションなどを活用して販売することで、費用を削減することができます。
  4. 原状回復工事の代わりに居抜き売却を検討する
    – 原状回復工事は、店舗を解体・改装する費用のことです。これにかかる費用を抑えるためには、居抜き売却を検討すると良いでしょう。
    – 居抜き売却では、次のオーナーに店舗を引き継ぐため、解体や改装の費用を最小限に抑えることができます。

これらの方法を活用することで、廃業や閉店時の費用や手続きの負担を軽減することができます。廃業や閉店に伴うストレスを最小限に抑え、スムーズに終了するために、事前の計画と対策を立てることが重要です。

まとめ

廃業や閉店を検討する際は、その違いや費用、影響を十分に理解し、適切な対策を立てることが重要です。経営状態の悪化や後継者不在など、廃業を選択する理由に応じて、コスト削減や事業再構築、資金調達など、様々な対策が考えられます。また、廃業にはメリットもデメリットもありますので、それらを考慮して慎重に判断する必要があります。さらに、居抜き売却やリース品の活用、不用品の処分など、効率的に廃業や閉店を進める方法も検討しましょう。経営者として最適な選択をするためには、十分な情報収集と周到な準備が欠かせません。