今日は、経営危機に陥っていたUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)が、いかにしてV字回復を果たし、日本を代表するテーマパークへと成長したかについて解説します。
USJの劇的な再生は、マーケティング戦略の重要性とブランド価値向上の必要性を物語っています。
森岡毅氏が導入した革新的なマーケティング手法や具体的な施策について、詳しく見ていきましょう。
1. USJの危機と森岡毅氏の就任
USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)は2001年に開業しましたが、その後、来場者数が伸びず業績悪化が続いていました。この時期、USJは経営危機に直面しましたが、2011年に森岡毅氏が就任することで救われました。
森岡氏は数学や統計の知識を用いた戦略理論を取り入れ、USJの経営をV字回復させるキーマンとなりました。彼はマーケティングの重要性を強く認識し、顧客の視点に立った戦略を展開しました。
初年度にはUSJは年間1100万人を集客したものの、翌年には700万人台に急落し、さらに3年後には事実上の経営破綻に至りました。しかし、森岡氏の力強いマーケティング戦略により、USJは再び注目を集めるようになりました。
森岡氏は、USJのターゲット層を拡大するために、チケット価格の値上げやテレビCMの質の向上などの提案を行いました。また、ハロウィン・ホラーナイトなどのイベントを通じて、より絞り込まれたターゲット層を形成することにも取り組みました。
さらに、森岡氏はUSJのブランド価値向上のためにも積極的に施策を行いました。顧客のニーズに合わせた新しいアトラクションへの投資を重視し、これによりUSJはますます魅力的な存在となりました。
森岡氏の功績は多岐にわたります。彼の徹底的な顧客志向の姿勢がUSJの経営戦略に深く浸透しました。森岡氏のマーケティング思考によって、USJは大きな転機を迎え、V字回復を果たすことができました。
2. 徹底した顧客視点の重視
USJのマーケティング戦略の成功において、最も重要なポイントは「消費者視点」に立つことです。森岡氏は顧客の心理を深く理解し、顧客が求めるものを提供することを重視しています。これは一見当たり前の考え方のように思えますが、実際には顧客の本当のニーズを企業が誤解することが多いのです。
消費者視点の重視はシンプルな考え方のように思われますが、日本企業にはまだ浸透していないことが多いです。日本企業は技術に過度に依存する傾向があります。例えば、iPhoneの参入によって大手メーカーのビジネスモデルが崩壊した際の教訓を十分に生かしていません。
Appleの製品には説明書がないという特徴がありますが、これは利用者の利便性を重視するコンセプトに基づいています。一方、日本メーカーは技術の進化に合わせてタッチパネルを導入するなど、逆の考え方をしています。
日本のメーカーが作る製品には膨大な説明書が付いていますが、世界では受け入れられなくなってきています。消費者の視点で考えれば、どちらが優れているかは明らかです。説明書があまりにも多すぎるため、利用者が全ての機能を使いこなせず、技術の有効活用が制限されることがあります。
また、日本企業における終身雇用や年功序列の制度もマーケティングにおける障壁となっています。これらの制度のために、マーケターが育成されず、消費者の代弁者としての力が欠如してしまうのです。調査結果によれば、ストレスや上司との関係に悩む中間管理職以上の人々が多いことが示されています。
徹底的な顧客志向を持つことがUSJの成功の鍵です。森岡氏は消費者の立場に立って自らパークを体験し、問題点を見つけ、改善策を見つけることを重視しています。これは提供側だけでなく客観的な視点で物事を考えることの重要性を示しています。
顧客のニーズを把握し、ターゲット設定を行うこともUSJのマーケティング戦略の重要な要素です。森岡氏はハロウィン・ホラーナイトなどのイベントを若い女性をターゲットに設定しました。これにより、日常からのストレス解消や鬱憤晴らしの場を提供することを目指し、40万人以上の集客に成功しました。
また、USJはリピーターの発掘にも力を入れています。森岡氏はチケットの価格が上昇したにも関わらず来場者数を増やし続けることを実現しました。これは、ユーザーが一定の期待値を超える体験をすることでリピーターになるからです。新規顧客の開拓だけでなく、既存の顧客のニーズを把握し、質の高いサービスを提供することが継続的な利益を生み出すために重要です。
USJの成功は、徹底した顧客志向の重要性を証明しています。日本企業においては、顧客の視点やニーズを重視する姿勢を持つことが求められます。
3. ハロウィン・ホラーナイト等のイベントによるターゲット層の絞り込み
USJは、ハロウィン・ホラーナイトなどのイベントを通じて、ターゲット層を絞り込む戦略を実施しています。
この戦略は、特に若い女性層をメインターゲットにしており、ストレス解消の場を提供することで多大な反響を得ています。
3.1 ストレスを発散させるイベント企画
USJは、予算が限られていたため、大規模なイベントを行うことができませんでした。
そこで、森岡氏は低予算で実施できるハロウィン・ホラーナイトを企画しました。このイベントでは、以下の要素を取り入れています。
- ゾンビの衣装を着たスタッフがパーク内を徘徊する
- パーク全体をゾンビで溢れさせる
これにより、若い女性たちは様々な場面でストレスを発散することができます。大声で叫ぶことや騒ぐことが許される空間を提供することで、彼女たちのストレス解消の場を提供しています。
3.2 独身の若い女性層に共感を呼び出す
ハロウィン・ホラーナイトは、これまでストレスを発散する機会がなかった独身の若い女性層に大きな共感を呼び、多くの来場者を集めました。彼女たちにとって、ハロウィン・ホラーナイトはストレス解消の場だけでなく、新しい仲間との出会いの場でもありました。USJは以下のような施策を行い、若い女性層のニーズに合わせたイベントを提供しました。
- ハロウィン・ホラーナイトのイベント内容に独身の若い女性層が共感できる要素を取り入れる
- イベントを通じて新しい仲間づくりの機会を提供する
これにより、USJは若い女性層からの支持を得ることに成功しました。
このように、ハロウィン・ホラーナイトは、ストレスを溜め込みやすい若い女性をターゲットにすることで、多大な反響を得た施策例です。
USJは顧客層を絞り込むことに成功し、マーケットでの競争力を高めることができました。
4. ブランド価値向上のための施策
USJは、ブランド価値を高めるために、以下の施策を行いました。
4.1. パーク内でのクルーとのコミュニケーションの強化
USJは、パーク内のクルーとのコミュニケーションを重視し、顧客との接点を増やしました。
クルーの親切な対応やサービスにより、顧客はより良い体験を得ることができ、USJのブランド価値も向上しました。
4.2. 画期的なアトラクションの導入
USJは、画期的なアトラクションを導入することで、顧客の体験価値を向上させました。
新しいエンターテイメント要素や技術を取り入れることで、顧客は驚きと興奮を体験でき、USJをより一層訪れたいという思いを抱くようになりました。
4.3. 日本アニメや和の要素の取り入れ
USJは、日本アニメや和の要素を取り入れたアトラクションを展開することで、日本文化を体験できる場としての認知度を高めました。
海外からの来場者も増え、USJのブランド価値がさらに向上しました。
これらの施策により、USJは顧客のニーズに合わせたエンターテイメントを提供し、ブランド価値を高めることに成功しました。
5. 顧客ニーズに合わせた新規アトラクション投資
USJのV字回復を実現するために、顧客のニーズに合わせた新規アトラクションへの投資が重要です。
顧客満足度向上を目指し、USJは以下の取り組みを行っています。
顧客の要望を把握する
顧客の要望を正確に把握するため、USJはさまざまな手法を活用しています。
アンケート調査や顧客の行動データの分析により、顧客の体験やエンターテイメント要素のニーズを把握しています。
ニーズに合わせた新規アトラクションの開発
USJは、顧客の要望に応えるため、新しいアトラクションの開発に力を入れています。顧客からの要望に基づき、「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」などのテーマパークを制作しています。
また、映画スタジオとのコラボレーションにより、人気映画をテーマにしたアトラクションも提供しています。
アトラクションの魅力の最大化
新たなアトラクションを開発する際には、顧客のニーズだけでなく、アトラクションの魅力を最大化するための工夫も行われています。
最新技術の導入や演出の工夫により、顧客に一層の感動や興奮を提供しています。また、アトラクションのストーリーテリングにも注力しており、顧客が没入できるストーリーを構築することで、一体感を味わってもらえるよう努めています。
これらの取り組みにより、顧客のニーズに合わせた新規アトラクションへの投資が実現されています。顧客満足度の向上を通じて、さらなる集客やリピーターの獲得を目指しています。USJは、顧客の声に耳を傾け、夢と感動を提供する新たなアトラクションの開発に取り組むことで、今後も成長し続けることが期待されます。
まとめ
USJのV字回復は、森岡毅氏のリーダーシップと徹底した顧客視点に基づくマーケティング戦略によって実現されました。
彼は顧客ニーズの把握、ターゲット層の絞り込み、ブランド価値向上への取り組み、そして新規アトラクションの開発など、様々な施策を実行してきました。この過程で、顧客視点の重要性が強く意識され、日本企業にも浸透する必要があることが示されました。
USJの事例は、企業が持続的に成長するためには、消費者の立場に立って戦略を考え抜くことが不可欠であることを物語っています。